『チョコとふねと花束と。』  CAST:Katsura,Tatsuma,Gintoki.


















 「ではこれより、明日に迫った戦の作戦会議を始めようと思」
「あれ、羊羹。俺の羊羹、が、無い?あれ、俺の羊羹ドコ行ったのヅラぁ?」
「ヅラじゃない、桂だ。…羊羹なら確か昨日佐古田が食べてたぞ」
「佐古田ァァ!!どこいったてめェェェ!俺の羊羹返せェェ!」
「おぅーいヅラ!金時!!見てみぃこの模型!!天人どもが乗ってきた船の最新モデルを1/300サイズで精巧にッ…」
「るっせえっつーか俺は金時じゃねぇ銀時だ!一体いつになったらお前は覚っ…あ゛っ!佐古田!佐古田てめぇ俺の羊羹喰いやがッ」
「ごふっ!」
「あ?」
「あああああ!金時の拳で船が粉々にィィィィィィ!?」
「いや金時じゃねっつの…じゃなくて、その……ごめん?ていうか、当たったの、船じゃなくてお前の鼻じゃね?……だいじょぶ?」
「ああああ……」
「おい坂本、そんなおもちゃの破片にぼたぼた涙と鼻血を落としながらうずくまるんじゃないまずは顔を拭け。銀時、適当に謝りながらさっさと佐古田を殴りに行こうとするんじゃない、せめて少しは誠意を見せてやれ羊羹なんぞまた買って来い、つーか貴様ら俺の話を聞けェェェェ!!」
「うわっ、ヅラがキレた!」
「ヅラじゃない桂だと言っとろーが!」
「わ――ごめん桂!イヤ桂さま!!」
「ヅラぁ、顔が怖ぇーぞ。もうちょっとこう、にっこり可愛く笑ってみんけー」
「誰のせいだ誰の!この船馬鹿!甘味馬鹿!!ダブル馬鹿ァァ!」
「なんだと甘いものと天然パーマをなめんじゃねーぞこの」
「天然パーマに関しては一言も触れとらんわ!」
「あ〜今日はいい天気じゃなぁヅラ、金時。」
「あ!?」
「なんだって!?」
「絶好の船日和じゃけぇの〜」

 にかっと笑う。少しあどけないような、裏表も何も無い。

「今日は船散歩じゃ、散歩。桂も金時も来いや、えぇもんいっぱい見せちゃるけー!隅田川はえぇぞ〜!!」






 そして彼特有のアッハッハッハッというどこかネジ一本抜けているんじゃないかと思うような明るい笑い声を上げて、どんどんと二人の背を押す。そうすると、二人揃って、ふっとため息をついて、
「…しゃあねぇ。行きか帰りで羊羹買ってくれよ、ヅラ」
「自分で買え。…作戦会議は、夜だな」
「ハッハッハッ!ほれ出発じゃあ出発!!おーい、他、誰ぞ行かんかー?」
 二つ三つと上がった声に、また笑顔で応える。

 陽の眩しい、秋晴れの空の下・だった。




































 五月蝿い蝉の声が、降るように辺りに響いている。
 深い緑の造る影の下をゆっくり歩いていくと、目指すところが近づくに連れて、ひんやり空気が冷えていくように思えた。黙って歩く。
 連なるのは、白い、黒い、墓・墓・墓。


 墓地の一番奥まった所に、あまり手入れされず生え放題といった感じの草木に囲まれて、少し大きめの石がぽつんとあった。他の墓のように四角く削られてもいない、ただ塚っぽく細長い形をしているだけの石だ。表面に、『攘夷戦争 慰霊碑』とだけ彫られている。
 もう墓の間を真っ直ぐ歩いていくだけ。手に持った桶と中の水と花の重さを感じながら、ゆっくりゆっくり歩いていく。暑くて、長く伸びた髪が今ばかりは鬱陶しかった。
 その時、不意に線香の匂いがつんと鼻をついて一瞬足を止めた。彼岸でも盆でもないから、なんだかその匂いが妙に浮いて思えた。
 少し目を凝らし、塚を見てみる。何かが供えられているようだった。


 自分以外には訪れる者などいないと思っていたのに


 軽く首を傾げ、そして再び歩み始めた。石まで二、三歩という距離まで近づく。
「……」
竹を短く切っただけの質素な筒に挿されたたった一輪の菊の花。墓石の下部分を囲むように置かれた小振りの石たちの間に適当に差し込まれている線香、から、立ち昇る白い煙。芳香。
 そしてその傍に、羊羹が一つと板チョコ一枚、それに小さな小さな屋形船の模型とが、無造作に置かれていた。

 ふっと微笑う。


 「あんな奴らに先を越されるとはな…」
呟きながら、羊羹などにかからないよう気をつけつつ水を墓石にかけてやる。日差しを受けて、それはきらきらと輝きながら流れていった。
 花を供える。線香を添える。
 甘い菓子と船とを眺め、それから自分の腰に差した刀を眺めて、ほんの少しだけ、懐かしいいつかが恋しい気がした。
 これから自分の思うことが為されようとも為されずとも、同じ懐かしさが戻ることはない。そうは、解っているけれど。

 今度、三人で呑みにでも行こうか。

 ふっとそう思った後で、銀時が甘い物好きの酷い下戸で坂本も好きな割にすぐ悪酔いすることを思い出し、やめようと思った。



























 しばしぼうっとした後で、じりじり肌を刺す日差しで少し我に返り、それから桂はそっと手を合わせ瞑目した。







                                      ---------End.
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 なんか無性に攘夷派書きたくなった時にぱーっと書いたものです。ずいぶん前に日記でちょっと触れたんですが結局その時はUPに至らず…というかHTMLに変更まではいったのに次の日にUP持ち越そうとか思ったらそれきりこれの存在忘れちゃって一ヶ月ぐらいした後に更新日時順にふと並べ替えてみた時んなってやっとこ思い出したという(馬鹿)

 攘夷派はとにかく話のかけあいが楽しくて好きです。万事屋や沖田・土方のエンドレス漫才(違)を書いてるときと感覚が似てます あれそれってオールキャラじゃん(ぇ)
 実は色々甘い(文章のツメが)な〜やばいな〜〜と個人的に血の気の下がる部分は案外いっぱいあるんですが、結局このままでは更新が極端に少なくなる!ってことで半ば投げやりにUPです。でも攘夷派はもっといっぱい書きたい…!(一人ぼやき)