『Message』     CAST:Hizikata,Soyo.

















 「火は恐いですよ」
「そうですね」
「刀だって」
「ええ」
「銃さえあるのに」
「爆弾も付け加えといて下さい」
「…行くのですか」
「はい」
「どうしても?」
「はい」
「……」
少し、息を吸う。
「逃げて下さいませんか」
そこで初めて、刀から視線を外して彼女の顔を見た。白い顔が無表情に近い泣きそうな表情でこちらを見つめている。また言う。
「逃げて、下さいませんか」
「駄目です」
きっぱりとした返事だったが、彼女はまた重ねて言った。
「私のために、逃げては下さいませんか。」
「はい?」
驚きが少し表情に出る。それから僅かの間の後に、
「……それも、無理です。」
言った。
 彼女の表情が、きゅっと歪む。
「無理、ですか?」
「ええ」
「どうしても?」
「どうしても。貴方の為、でも。」
「私では貴方の堰にはなれない?」
「堰はもうずっと前から在るのです」
淡々と。
「ずっと、ずっと前にもう、この人に命と生涯を懸けようと、決めてしまった人が居るから」
少し遠くを見て。
「…俺の命は、その人の物でしか有り得ないと思っています。だから今貴方に捧げることは出来ません」
「……その方は…」
「その人が、行くと言っています。だから俺は、最期までその人についていくつもりです」
「……そうですか」

 ならもう、私の言う事は何もありません。そう呟いて、そよは俯いた。




































 青い空が広がる。血でぬかるんだ地面を踏みしめ、ふいとそれを見上げた。
「おっ、土方さん見―っけ」
気の抜けた声に振り返る。若干返り血の付いた顔が、日常と変わらずのんびりとこちらを見ていた。
「空見る余裕有んですかィ。じゃ、なんの心配も要りませんねィ」
「心配?お前がか」
鼻で哂ったが、沖田は意にも介さず刀を振って血を切る。
「それなりにはしてますぜィ」
「ほー」
「あんたは最初っから死ぬ気ですかんねィ」
はっとして見ると、にやりと笑った目がこちらを見返してくる。ため息をついた。
「…言っとくが、近藤さん死ぬまでは死ぬ気ぁ無ェぞ。」
「でしょーね。じゃ、俺もそれまでは死にやせん」
「……そーかい」
「そういやぁ、」
ふと思い出したように、
「死ぬ気のあんたも、まだ少しは思い遺すところあったんですかィ?」
「あ?」
「さっき空見てるときのあんた、空じゃないどっか見てた」
「…いつからそんな詩人になったんだてめぇは」
「ま、どーでも良いんですけどねィ」
こともなげに言い捨て、すたすたと血や死体を踏みながら進んでいく。前方では未だに怒声・銃声が響き、煙は前も後ろも右左も関係無しにあちこちから上がっていた。前線に向け、沖田はなんの気負いも無しに歩み寄る。
 その背中を見つめ、それから二度目のため息をついて、土方も歩き出した。


 歩きながら、また空を見る。青い空は、きっと少し遠いあの場所とも繋がっている。

 思い遺すところ・というのが本当に在るとしたら、多分、あの人に。





































 ほんの少し曇った空。窓から見上げ、ふうとため息。
「姫さま、少ししたら降りだしますよ。窓をお閉めになって下さい」
「もう少しだけ」
従者の言葉を一言で退け、ただ見つめる。いくら城が高くても、戦火や煙は少しも見えなかった。
 「……遠い」
「なんですか姫さま?」
「なんでもありませんよ。…江戸は、穏やかですね」
すると従者の顔が少しほころんだ。
「ええ。……それも、最前線で戦ってくれている兵たちのお蔭です」
「……はい…」
 小さく頷き、もう一度だけ空を見て、窓を閉めた。


 曇り空。だけど、薄い雲の合間合間に覗くのは紛れも無く青い優しい空。



 あの人の居る所で空がどんな色をしているのかは分からない。けれど、どんなでもそれはきっと、私の見ているこの空と同じ空だろう。

 こんな些細なことでも私はあの人と繋がっているようでとても嬉しい。
 嬉しいけれど、寂しくて恋しくて、…愛しくて。



 だから毎日、毎日、貴方に。














































 多分ちゃんとあなたに伝えられることはないでしょう。きっと、無いでしょう。
 けれど、言い残したことがありました。言いたくて言いたくて、でもどうしても言えなかったことがありました。



 伝えられないけれども、遅すぎたけれども、ただあなたの為にこの一言を。



























 『君が好きです。』














                                       ---------End.
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 ちょっと暗い土そよ。ごめんなさい死にネタ(死んでないけど);;


 しょっぱなから訳わかんなくて…もうホントにごめんなさい・みたいな(汗) 私的に高杉辺りの過激派攘夷志士が反乱起こしたとかイメージしてます。皆さんはそれぞれ好き勝手にとりあえずなんか戦争イメージして下さい。天人相手でも全然OKだと思いますこの文なら(おーい)

 キーワードは「言い残したこと」、「繋がった空」って感じでしょうか。土そよは口が裂けても貴方のことが好きとは言ってくれなそうです。でも悲恋も嫌だなー…



 個人的希望でいえば土方たち真選組はちゃんと生きて帰って来てくれる・と。でも話としてはやっぱ死ななきゃ駄目なんですかね…駄目ですか…(え)