『たとえば甘く染み入る花の雫のように』 CAST:Hizikata,Soyo.
「…あまり一人で出歩かないで下さい・と、もう何度も」
「すみません」
「…以前より、良く動くようになられたようで」
「自分でも不思議なのですけど」
神楽ちゃんと遊んでからは、いつでもふっと何処かへ行けるような気がしてしまって。
そう言って、貴女はふふっと微笑う。
「…気の所為でしかありませんよ」
「分かっております。でも、じいやは簡単に撒ける・というのは気の所為ではないようなんです」
「……ですが、」
「ですが、貴方はきっと撒けないだろうと分かっていますよ。ちゃんと」
「…なら最初から逃げないで下さい」
「それは厭です」
思いがけないきっぱりとした返事に、目を丸くして隣のそよ様を見つめた。するといつもの真っ直ぐな目が俺をやんわりと刺して、
「だってそうしたら、こうして土方さまとお話する機会が、全く無くなってしまいますもの」
細い声音に似合わない、からかうような調子で、ぽんとそんな言葉を口にするのだ。
だからこちらは堪らない。
「……間違っても、そのようなことを軽々しく人前で仰らないようお願いします」
「あら、お願いされなくても言いませんわ。」
「……」
「だって私は今のところ、貴方以外の方にこんなことを言う気はありませんから」
「…だからっ!」
「土方さま、耳がお赤い」
言われなくたって頭(と顔)に血が昇っているのは良く分かってる。思いっきり照っている太陽の所為に出来ればどんなにか楽だろう、けどこの人にはそんなものは通用しない。
「…もうすぐ城の方々が待っておられる所へ着きます」
「そうですか」
少し、沈黙が降りる。少なからずほっとしている自分にまたちょっと腹を立てていると、不意にそよ様が袖を引っ張った。一瞬不覚にもびくりとしかけたが、すぐに気を取り直してなんですかと問う。微笑を浮かべた小さな顔がこちらを見ている。
彼女が、少し背伸びした。
「…私は、“そういう”貴方が、好きですよ。」
その時間がどれだけだったのかなんて分からない。多分三秒にも満たなかったろうと思う、彼女が耳打ちした間だけなんだから。
だが俺にはその時間がひどく長かった。頬に感じた小さな手の冷たさ、耳を撫ぜた温い息、そして頭の芯を震わせた優しい囁く声。
俺は凍ったように固まっていた。時期外れの蝉の音が突然耳に飛び込んだ。それでも身体は動かなかった。
「土方さま」
呼ばれて、やっと我に返り視線を上げる。もういつもの距離に居る彼女が、変わらない微笑を浮かべて立っている。
「急ぐのでしょう?」
行きましょう、そう言ってすたすた歩き出した彼女の背中を五秒眺めて、そして俺は思い出したようにまた血が顔へ昇りだすのを感じた。
「……ッ、そよ様っ!!」
くすくす笑いが返ってくる。
「大人をからかうのはやめて下さいっ」
「土方さまだから、からかうのです」
隣へ戻ってきた俺に、また笑いかけてくる。無邪気な癖にどこか女特有の含みが入っている笑みだった。嫌な汗がこめかみにわいている気がする。
「でも、さっきのはからかいじゃありませんよ」
「…」
「あれは、本気です。」
「……」
「あ、それと、先にも申しました通り、赤くなった土方さまが好きなので…ちょっと悪戯のつもりで」
今も俺は赤いのだろう、こちらを少し見てまたくすくす笑った。
そんな彼女がどうしてか、総悟やらあのチャイナ娘やらと似た笑い方をし始めているような気がして、俺は重度の眩暈に襲われる。
冗談じゃ、ない。
----------End.
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書いてみたら土神よりよっぽどカップルらしくなってちょっと吃驚(笑) うちの神楽は誰にでも喧嘩売るから…しかもどちらかというと引っ掻きながら甘える猫みたいなとこが有るか(意味不明なため強制終了させて頂きます)
カップルらしいのは良いけど、どうも私が書くとどのカップルもほのぼのバカップルになっちゃって困りますね(ぇ) 犬夜叉もいつもこんなんで…いやあっちはオフィシャル公認だからってこれと比べ物にならないくらい好き勝手やってますけど……弥珊。
ごめんなさい(おーい)
ていうかこれは土そよじゃないですね。そよ土だよ日朝さん(あー)
そよの言ってる「そういう土方」は「すぐ赤くなって照れる土方」です。瞳孔開いた目で周り睨んで刀握ってる貴方より・と。……捏造もたいがいにしとけって話ですか、ハイ(あ)
関係ないですけどそよ→土方の呼び方は「土方さま」のほうが「土方さん」より好きです。なんとなくですけど……逆の方は一応「そよ様」にしてますが時々思わず「姫さま」とか「そよ姫さま」とか書いてるかもしれません; でも「そよ様」一番可愛い気がするんだ……
くだらない話、ご清聴有難うございました(頭を下げて(本気))