『僕らの日常/1』  CAST:Hizikata,Gintoki.




















 「あ」
「あ」


 二人揃って声を上げ、同じように右足を少し踏み出しそうに曲げかけたまま固まった。

 手にはそれぞれ小さな白いビニール袋を提げている。











 「…なんだ、多串くんじゃないの」
「俺は多串じゃねぇ、土方だ」
 先に動いた銀時の声はいつもの如くのんびりとしてどこかまどろっこしい。なんとなく舌打ちしたい気分になったが別にそこまでする理由も無いので煙草を少し噛み締めるだけに抑えた。所在無さげに空いている左手で首筋をぼりぼりと掻く。
「いつになれば覚えるんだ、てめえは……まぁ良い。なんだ、この先になんか用か?薬屋しか無ぇぞ、もう」
「イヤ、その薬屋に用あるのよ。ていうかそっちこそ。薬屋しか無いんだろ?オイ」
「俺もあったんだよ、用が。」
少し間が空く。
「…用、か。なんだ、糖尿病が進行でもしたのか」
「馬鹿言うんじゃねぇ、もしそーだったら薬屋なんかじゃ済まな…って、違う。なんでそんなこと知ってんだ」
「お前んとこの眼鏡の奴が、うちの山崎に愚痴ってたらしいから。幾ら言っても甘いもんやめてくんないってな」
「…あの野郎、帰ったらご飯に砂糖たっぷりふりかけてやる」
「やめてやれ、洒落にならねぇ。……つーかだったら結局なんなんだよ、お前。なんか怪我でもしたのか?それとも病気?」
「いや、うちの胃袋拡張娘がよ……」
「いぶく…なんだって?」
「胃袋拡張娘。アレだよアレ、ほら、花見ん時にお前んとこの金髪のガキとなんか良く分かんないけど良い勝負やってたチャイナっ子」
「あぁー。あのピンクの髪の…」
「いつもは必要以上に元気いっぱいの癖によ、風邪なんてオーソドックスなもんにかかりやがって」
「へぇ?夜兎とか言ってたよな、お前……天人も風邪ひくんだな」
「俺もびっくりだわ。せっかくだから少しは食欲も落ちてくれるかと期待したけど、しっかり人一倍どころか二倍も三倍も粥喰ってやがる」
「酷ぇなあ、おい。そういう時にゃ食欲はあるんだね良かったなァぐらい言ってやるもんだ」
くつくつと笑うと、相手は少々不愉快そうにこちらを見た。がさりと袋が揺れる。ちらっと覗いて見えた中身は、多分なけなしの金でなんとか買ってきたのだろう肉やら野菜やらの食料品。少しでも滋養の良いものを・と件の眼鏡の少年が言ったのかも知れない。
「馬鹿、んなこと言ってられっかよ。ただでさえあいつ来てからずっと一人で一日三合喰い尽されてるってのに……で、何、小串くんはなんで居んの?」
「多串が駄目だからって小串なら良いだろうなんて思うんじゃねぇ。……こっちも似たようなもんだ」
「あ?」
「こっちはそのチャイナ娘と互角だった金髪の方がぶっ倒れてよ」
「へぇー」
「あいつ普段ほとんど表情変えねぇからよ、いつの間に何溜めてたんだか…急に熱出してばったりだ」
「あらら」
「ったく、遣いに出される人間の身にもなれっつの」
「中串くんもなかなか酷いねちょっとは優しくしてあげりゃ良いのに。…なんか日本犬みたいだなそいつ」
「多串小串ときたら中串なそうだろうなそう来ると思ったよこの野郎!……日本犬?なんで。」
「前に知り合いの獣医に聞いたんだ。日本犬は飼い主に忠実で堂々としててまさにブシドーとかって天人とかには人気あるんだけどよ、」
「はぁ」
「逆に表情がちっとも見えなくて、獣医にしてみると一番怖ぇんだとさ。ポーカーフェイスでじっとしてたと思ったらいきなりがぶり、なんて。あー洒落になんねぇ」
「……似てるな」
「ん?」
「いや、なんかうちの沖田そのまんまだよ、それ。帰ったら教えてやるかな」
「ふーん。…あれ、なんでこんな普通に話し込んでんの俺ら」
「…そういやな」
「ヤだなぁ早くもオバちゃん化してるみたいじゃん」
「俺までまとめて仲間に入れんじゃねぇ。それと俺らはどんだけ歳を喰おうともオバちゃんにはなれねぇせいぜいオッサンだ馬鹿」
「分かってるっての…じゃぁーね、佐々木森くん」
「おい串からすら離れてんじゃねぇか!おい!オイィィ!!」





 ゆっくり遠ざかっていく白い背中に叫んで呼びかける。しかし銀髪天パー頭は少しも振り返らずに、ただ軽く左手を上げただけで薬屋へと歩き去っていった。その後ろ姿をぼんやりと見送った後で、
「……とっとと帰ろう、もう」
呟いた。煙草を買いに雑貨屋へ寄ったら、すぐにでも・と。

 なんだか疲れた様子であった。





























 そして奇しくもほぼ同時刻に二人がそれぞれの帰るべき場所に帰り着いたとき、そこにはまたほとんど同じような叫びが響いたのだった。

「…オイィィ!!居ねぇじゃねぇかあいつ!」































 「おい山崎!山崎!?」
「なんですかぁ副長ー。」
「総悟の野郎どこ行った!?ここに寝てたろ俺が出かける前まで!」
「へ?いや、そこに居るはず…あれ!?」
「だぁぁぁっ、もーあいつはいっつも訳わかんねえェェ!!」


























 「おい新八!新八!!新ちゃん!?ちょっと、何処ォォ!!」
「なんですか銀さん、五月蝿いなぁ…甘いものならもうありませんから、洗い物終わるまでとりあえず愚痴は待って下さ」
「んなこと言ってんじゃねェ!神楽どこ行ったよ!?何、部屋移動したの!?」
「移動するほど部屋数ないでしょ、ここは。何言ってんだか…定春と一緒に寝てるんじゃないですか?定春大きいから、隠れちゃって見えないのかも」
「違ェェ!つーか定春もいねェェェ!!」
「あれ!?か、神楽ちゃん?神楽ちゃーん!」












 ぽつぽつ、雨が降り始めていた。










                                 --------End.
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 まだ終わってない続き物があるにもかかわらず二つ目始めちゃった大馬鹿者(ぁ) しかも季節違います…夏ですこれ 初夏だったりします(最悪)

 でも今あるネタの中ではこれが一番私自身の理想に近い土神なんです…!え?土神ですよこれ(分からないよ) これから土神になるんです…!きっと!!(ぉぃ)
 一度頭を初期設定にリセットしないと土神が書けません。そろそろ同人思考にどっぷり浸かりすぎて頭が働かなくなってきた…あわわ;;